(豆、まめ、マメ)って「肉刺」って書くんですね。由来はなんでしょう?
私、左足のうらに親指サイズ台の大きな水ぶくれを作ってしまいました。
どのように治療したら速やかにリカバリーできるでしょうか?失敗は学ぶチャンスです。
繰り返される物理的なストレスで皮膚が損傷し、水ぶくれができるのです。表皮が浮き上がり、その下に水がたまります。
マメの処置の仕方
「マメ」の水は抜くべきか否か。議論はされていますが、まだ結論は出ていません。対処法としては3つあります。
(1)放置
(2)小さな穴を開けて中の水を抜く(aspiration)(drainage)
(3)水疱の膜を切除(deroofing)し、創傷被覆材で保護する
現実にはケースバイケースでの対応となります。
(1)放置
あずき大程度の小ささであれば、放置で良いでしょう。そのうち自然に水疱膜が取れて新しいピンク色の皮膚が顔を出してきます。手間もかかりません。
(2)水を抜く
ある程度大きいと、歩行時に圧迫やズレを受け、痛みが強くなります。この場合は水を抜くと楽になります。きちんと肌を洗ってから、針で刺す(一般向けに許される行為かどうかは不明)、指で摘んで破るなどして廃液します。上から吸水性のある被覆材(カットバン)で保護しましょう。数日後に水疱の膜が自然に脱落し、下からピンク色の皮膚が現れてきます。
(3)水疱の膜を切除
ハサミなどを使う場合は医療機関での処置が望まれます。水疱膜を切除すると、水疱の水が流れ出ます。あらわになった皮膚はまだ未完成で、乾燥すると痛みが出ます。ハイドロコロイド被覆材で保護すると湿潤環境が保たれ、痛みが和らぎます。数日間で新しい皮膚が完成します。
ランナーの場合
ランナーであるあなたは、なるべく早く運動を再開したいでしょう。すると水疱に再びストレスをかけることになります。早めに潰した方が楽になります。
対処法は(2)もしくは(3)となります。
私の治療の経過
当日
スタートして5キロほどで左足拇指球部に違和感を覚え、10キロ過ぎたあたりから痛み出しました。おそらくハーフを通過した頃には水疱(水ぶくれ)になっていたと予想されます。
ゴール直後に左足を確認しました。親指の幅よりも大きい水ぶくれが観察されました。血が混じっていることはありませんでした。いやあ、しかしこの状態で少なくとも20キロ、およそ1万回(フルマラソンは4万歩と言われる)はズッチャズッチャとマメの上から踏み込んでいたんですね。
私の予想では、あるポイントで水ぶくれが出来、その上から踏み込むことで水が広がって水ぶくれを拡大させたのではないかと考えます。
歩くと痛むだけでなく、水疱の水が中でドゥルドゥル暴れるのを感じます。水疱に荷重しないようにエッチラオッチラしながら歩いて帰宅しました。
その日は重症度も分かりにくく、まずは放置で経過を見ることとしました。家帰ったら寝るだけですからね。翌朝起きたら治っていたなんて夢を抱きつつおやすみなさい。

翌日
起床。当然治っていない。歩くのにどうしても邪魔になりました。まずは水を抜いてみます。歩行が楽になりました。
しかしわずかの水が残ります。新たに供給されているのか、抜き切れないのか?その残りの水が水疱の中であっちこっち移動して暴れるのが気になります。そこで意を決して膜を切除しました。
『Effectiveness of aspiration or deroofing for blister management in patients with burns』
水ぶくれの膜を温存するか、切除するかで経過に大きな違いはない。(火傷の場合)
穿刺のみ(膜は温存)の方がケアが楽な分有利が気もします。しかし私の場合は歩行に際して「残った膜」が悪さをするようなので「膜の切除」を選択しました。
もう移動する水に悩まされることはありません。しかし、乾いてくるとヒリヒリ痛みが始まりました。そこで創傷被覆材であるハイドロコロイドのシートを貼りました。これは、寒天のような素材のシートです。傷から滲み出てくる水(滲出液)をその場で捉え、傷が乾かないようにしてくれます。湿潤環境で傷の修復が行われます。湿潤療法は早く治るだけでなく、乾燥による痛みからも解放されるメリットがあります。

数時間すると傷からの滲出液でふやけているのが分かります。滲出液があるということは、皮膚のバリアとしての機能が破綻している証拠です。
この湿潤環境下で傷が治るのです。それが湿潤療法。この液体に傷を治す栄養や成長因子が含まれるのです。
我々の体細胞は細胞壁を持たず、乾燥に対しては著しく弱いです。再生した角質で保護されるようになるまでは乾燥しないようにケアします。もちろん消毒も不要ですよ。
なお、この状態で歩行もできます。走るのはちょっと気がひけますが。
2日後
ハイドロコロイドを交換しました。
貼ったまま入浴しました。入浴時に剥がして、その後に新しいものに変えても良いですが、お湯の温度が刺激になりました。「因幡の白兎」状態であることが分かります。

試しに入浴後に乾燥状態にしてみたところ、ヒリヒリしてきました。
そこでワセリンを塗ってみました。それで多少痛みは和らぎましたが、ヒリヒリは残ったため、再びハイドロコロイドを貼りました。
3日後
夕方の入浴時に剥がしました。お湯が滲みました。
改めてハイドロコロイドを貼付。ふやけにくくなってきました。つまり、傷からの滲出液が減ってきたようです。傷の治癒が進んでいると思われました。
ランニングはしませんでした。

4日後
半日以上経過しましたが、ほどんどふやけていません。午後にハイドロコロイドを剥がそうとしたら剥がれませんでした。全くふやけない上に、新しく再生した皮膚にしっかりとこびりついていました。
引っ張りすぎると新しい上皮を損傷してしまいそうです。入浴時までそのままにすることにしました。傷の周り(正常皮膚の上)は剥がれたので、正常皮膚には若干の潤いがあったと思われました。一方新しい皮膚はまだ汗の分泌がなく、素材がふやけることもなく固着していたのでしょう。


湯船の中でゆっくりとふやかしながら剥がしました。
5日後
前日の晩からは傷を開放のまま乾燥させました。傷自体はまだ未熟な感じ。角質の厚みも全然無いです。
朝、ハイドロコロイドを貼って、2キロランに恐る恐る挑戦。ゆっくりジョグ。ハイドロコロイドはずれることもなく、その日はそのままとしました。
6日後
グループランニングに参加して9キロラン。前日からハイドロコロイドを貼ったまま。ずれることもなく無事終了。
傷自体はまだ未熟な感じ。軽く圧迫されるとバクバク脈動を感じます。角質の厚みもありません。まだまだですね。

7日後
前日のハイドロコロイドは貼ったままで、トレイルランニングに参加。20キロほど山道を走りました。
まずは走るのに支障はありませんでした。ハイドロコロイドのズレもなし。
夕方入浴時に剥がしました。やはり傷のところは固着しており、苦労して剥がしました。

8日後
軽く6キロラン。ハイドロコロイドはズレもなし。その日は剥がさずにそのままとしました。
9日後
軽く10キロラン。ハイドロコロイドはズレもなし。ジョグにも影響ありません。
ただし、足を下ろしてじっとしていると左拇指球部にドクドク脈動を感じます。
剥がそうと試みましたが、やはり頑固にくっついています。発汗するレベルで運動したのですが、創部からの発汗はなさそうです。

周りの無傷な皮膚からは容易に剥がれるのですが、傷からは剥がれません。
写真のように中途半端な状態になると嫌ですね。なので、入浴しながら慎重に剥がしました。
そしてその後は開放(オープン)で傷の経過を見守ることに。歩くときにも少し違和感あります。皮膚も薄いなあと感じます。
以上から、概ね1週間程度で走ることはできた(創傷被覆材で保護の上)と言えそうです。
10日後
乾燥状態でも痛みはありません。角質ができているようです。まだまだ厚みは足りませんが。

勇気を出して一本歯下駄ラン1キロあまりに挑戦。無事に終えました。
14日後
フルマラソンから2週間。若干の違和感はあるものの、ほぼ完治です。
治るまでの期間については、傷の重症度だけでなく、本人の年齢も大きく影響します。高齢であるほど回復に時間がかかるでしょう。

私が使用した創傷被覆材

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