絶望の谷から青空を仰ぐと、エンジェル、キューピッドたちがキラキラ、くるくる舞っている。ハイハイ、結構結構結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻の周りは…
それは柴又60キロ、ウルトラマラソン初挑戦である。柴又といえば「寅さん」だね。
寅さんが”矢切の渡し”を渡ったあの荒川。その荒川沿いを延々と走る過酷なマラソンだ。
あのフルマラソンでも30キロ過ぎてからは絶望感との戦い(実質負けているが)である。なのに、その「30キロ」はまだ折り返し地点だ。
大方の予想通り、あえなく体力が尽き、体力ゲージはレッドゾーンに。そして37キロ地点で脚が終わった。
ふくらはぎとスネの前が同時に痙攣。なすすべなく仰向けに倒れて青空を眺めていると、エンジェルたちが降臨したというわけ。エンジェルたちは励ますことはしない。むしろ天界へ誘うかの如し、悪ノリして乗っかったら現世では「死」を意味するでしょう?
ここで私の青春は終わったか。DNFか。まだ棄権の経験なかったし、まあ、良い機会かな〜?
でも、すこし休もう。ちょっとボーッとしよう。お疲れさん。十分に頑張ったよ。そんな妄想を描きつつエンジェルとたわむれる。
……
?
いつしかエンジェル達が姿を消し、景色が、ランナー達が、視界に入ってきた。脚の痙攣が落ち着いたようだ。
歩いてもゴール出来そうな時間だぞ。行ってみよう。歩いたっていい。
残された距離は20キロ以上。歩いたら何時間かかるかな?計算をする余裕はないようだ。脳のクロック数は最低限まで落ちている。おそらく脳波は限りなくフラットだ。
パンクした三輪車を必死にガシガシ漕ぐが如く。Queenの“don’t stop me now”がこだまする。ゴーGo! 徒歩時々ジョグからジョグ時々徒歩に変わる。
きつい、、つらい、、、脚だけでなく、腰もズーンと重苦しくなってきた・・・・
でも、ゴールに近づいているはずだ💦もう少しだけ頑張る…
苦しみに喘ぐなか、真剣に過去の自分を褒めていたことがある。
「オレ!Good Job👍🏻だよ。見事だ!」ってね。
それは、「100キロ」にエントリーしなかったことだ。
エントリー手続きは1ヶ月半前。パソコン画面とにらめっこしていた。「初めてのウルトラマラソン、60キロにしようかな?100キロにしようかな?」ウキウキ心を踊らせていた。
「60キロってフルプラス18弱キロだしインパクトなくない?ヤッパ100?いやでもな〜迷うな〜」
バカだな自分。どっちも地獄だよ。知らないということがいかに幸せなことか。。
”ポチ”
そして、大した根拠もなく「60キロ」を選んだのだ。
ギャンブルは苦手な自分だが、ここは大正解を選んだのだ。
時折振り返っては「100キロを選ばず、よくぞ60キロを選んでくれた」と過去の自分の選択行動を喜び噛み締めた。
そして、
トータルタイム7時間2分27秒でフィニッシュ。
終わった。ああ、ついに。
かなりの時間歩いているし、完走とは言えないです。
ところで、そうなんです。同日にメインレースの100キロがある。100キロメートルですよ。彼らの方が遥かに大きな壁と戦っているのだ。
そんな思いもあってか完全燃焼とは言いたくない気持ちもあった。これも負けず嫌い?
自分の未熟さを再認識するとともに、もっと高い壁に挑んでいるランナーを目の当たりにできたことも良い刺激になった。
次は100キロ挑戦?いやいや、まずは60キロでリベンジを図りたい。
帰りは柴又駅まで観光しながら。参道でおしるこ(ランナーに無料で配っていた)をすすり、お土産(柴又もち)を購入しました。
最後は寅さんにお別れを告げて。。。