こんにちは、金沢です。
カラヴァッジョ展
『バッカス』
ふざけたカツラを被って、気だるく見下すような視線で私たちを誘う若造。思わずポスターに気を取られ、振り向いた人も少なくないはず。このいけ好かない表情のポスターに吸い寄せられた私…主催者の戦略ですね。
注)ポスター:「カラヴァッジョ展」のPR用ポスターのこと
軽く酩酊してまぶたが下がって(眼瞼下垂気味)います。 😉
『女占い師』
1597年頃、油彩/カンヴァス、ローマ、カピトリーノ絵画館
©Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
女が手相を占いながら男の右手から指環を抜き取ろうとしています。女は男の目を凝視する一方、男の視線はどこか落ち着かない様子。
おそらく大げさな褒め言葉をかけ、男の自尊心をくすぐっているのでしょう。穴があくほど見つめられた男は全てを見透かされそうで目が泳ぎますが、胸を張り、腕を腰に当てて虚勢を張ります。やすやすと指環を抜き取られたことでしょう。滑稽な絵柄です。(個人的感想です。)
『法悦のマグダラのマリア』
行方不明とされていたが、2014年に発見された作品。この展示が世界初公開。
カラヴァッジョ 1606年 油彩・カンヴァス、個人蔵
国立西洋美術館 カラヴァッジョ展
wikipedia:Mary Magdalen in Ecstasy (模写作品の画像が引用されています)
マグダラのマリア
緩く羽織った衣は無防備で、はだけた肩と鎖骨、デコルテラインが官能的に表現されています。半開きの口。薄く開かれた目は逝っています。
顔の表情筋の緊張がなく、弛緩しきっています。膨れたお腹に組んだ両手を乗せて、妊娠を連想させます。血の気が退いて青白い顔色。チアノーゼ(青紫色)になった下口唇。死に瀕しています。通常、死にあがなう時は目を見開き、顔面の表情筋をこわばらせます。これは真逆の態度で、ある種の感覚に浸って身を委ねるように弛緩しています。どういうことでしょう?
カラパッジョは反社会性を持つ、過度に奔放でトラブルメーカーでした。殺人事件後の逃亡生活中に抱えていた絵画の一枚です。
法悦(ecstasy)とは宗教的な意味合いで、神に救われる恍惚体験を意味します。この『マグダラのマリア』は真逆であり、法悦のエクスタシーというよりは性的なエクスタシーが見て取れます。教会に喧嘩を売るようでもあり、カラヴァッジョのアイデンティティとも言える反社会性を凝縮した作品。
非寛容な社会にあってはタブーだったはずの問題作品。懐で隠し持つ他なく、カラバッジョ死後、人々の心を刺激し、模写されて出回ったのでしょう。(個人的感想です。)
あとがき
レンブラントやフェルメールの表現技法のルーツになったかもしれない、陰影を強調する技法。カラバッジョは背景も分からないくらい明暗を強調して主題を浮き上がらせています。人間味やドラマを想像させる力が強すぎる印象。家に飾るのはフェルメールの方がいいかなぁ。
日伊国交樹立150周年記念 カラヴァッジョ展
会場:国立西洋美術館
会期:2016年3月1日(火)~6月12日(日)
休館日:月曜日(ただし、3/21、28、5/2は開館)
開館時間:9:30~17:30(ただし、金曜日は20時まで開館)
*入館は閉館の30分前まで
公式ホームページ:http://caravaggio.jp/index.html