ブドウ糖はロマンだな〜|炭水化物が人類を滅ぼす|夏井睦著

『炭水化物が人類を滅ぼす ー糖質制限からみた生命の科学ー』夏井睦著 光文社新書(880円+税)

糖質制限に興味のない人はいないだろう。

「簡単に痩せることができる」
「健康になる」

なんて本当だろうか?

「リバウンドする」
「早死にする」

などと否定する意見も見られる。

「そもそもご飯をやめるなんてできないし〜」という人には、まずは糖質制限のからくりを科学的論理的に検証した本書をお勧めする。

私金沢も糖質制限を始めて3年過ぎるが、そもそものきっかけは理論(でんぷんが分解されてグルコースになってるという事実:中学で習ったよね)を知って、甘い砂糖を避けながら白米やパンをせっせと食べる行為が矛盾していると気づいたからだ。

糖質制限を理解するにあたり、糖質とは何か?どのような食品に含まれるのか?が第二章で解説される。

要するに甘いものとでんぷんが血糖値を上げるのだ。

食べて良いもの悪いものはサルでもわかるようになる。

さらに炭水化物は必須栄養素ではなく嗜好品であるということが示され、厚労省の食事バランスガイドの矛盾点や糖尿病治療の矛盾を鋭く指摘する。学界組織には頭の痛い話だろう。この手の反体制派的発想はワクワクしてしまう。

人類と穀物との歴史に話が移り、人類の定住生活の始まり及び穀物生産の始まりに光をあてる。なるほど、人間が炭水化物をこれほどまでに摂取し始めたのはここ数百年のことだった。確かに人口増加を支えたのは農耕だろうが、血糖値の上昇に身体の進化がついてこれなくなってきているのだ。

本書の随所に哺乳類の進化論、ブドウ糖から見る生命のエネルギー利用の進化などマニアックな考察が散りばめられており、読解するのは時間を要する。興味のない人は後回しにしても良い。しかし、ここにロマンを感じる人は少なくないはず。細菌レベルにまで遡る旅をする筆者の想像力はすごい。

私自身、シンプルなルールと当たり前の成り行き(水が高きから低きへ流れるが如く)に沿って物事を考えるのが好きなので、より上流の事象に気づくと嬉しくなる。

医師でもある筆者は語る。

「同年代の男性には本書を見てもらいたくない」
「他の男性はメタボ体型のままでいてもらい、自分だけ美味しい思いをしたい」

と。そう、皆が糖質制限を取り入れても筆者の懐には1円も入らない。利益相反のない立場からの、いやむしろ医者フィールドとしては利益を損なう立場からの糖質制限の提唱だ。

あとがき

今の私は白米やパンを見ても「栄養としての食料」と認識しなくなった。ケーキなどのお菓子と同じ嗜好品という認識である。

そういう意味では、より美味しい白米も食べてみたいし、ご飯と付け合わせのマリアージュを楽しみたいとも思っている。そして実際たまに食べている。

個人的にはご飯を食べたいので「糖質必要だよ」という論拠を望んでいる自分もあり、糖質制限否定本も読んでいるものの科学的論拠が満たされない…(そもそも”統計”は胡散臭いのが多いので根拠としては受け入れない性格なり)。

現時点では、理論では糖質制限に分があるなあ…

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