寒い時期に増えるのがやけど(熱傷)です。熱いお湯のやけどから電気毛布などの低温やけどまで。
やけどで水ぶくれ(水疱)blisterができます。
「水ぶくれを処理すべきか否か?」という議論があります。
これは議論する土俵が違えば、答えは異なります。
(1)熱傷を湿潤環境で治療するという前提であれば
水疱膜は除去したほうがよいと考えられます。
水ぶくれを破くと創面(キズの表面)が乾燥ストレスにさらされて痛みがでます。ここで湿潤療法をします。ワセリンを塗ったり、浸出液を適度に創面に保持する創傷被覆材(ドラッグストアなどで入手)をかぶせれば湿潤療法になります。湿潤にすると痛みがすっと退くのが分かるでしょう。
受傷後数日してからのやけども診ることも有ります。こうした水ぶくれを破くと、下地からきれいに修復されたピンク色の上皮があらわれることもあります。水ぶくれの内容(浸出液)は創傷を修復するための成長因子も含み、創を保護して、創傷の修復を促していると考えられます。水ぶくれの中でのいわゆる湿潤療法ですね。
一方、水ぶくれを放置すると感染infection(化膿)のリスクが高まります。とくに乳幼児はわずかな面積(手のひら一枚でも!)の熱傷で敗血症になるので注意が必要です。水疱膜をやぶり、内容液の排出を促す(ドレナージ)と感染のリスクが低くなります。
従って、感染が危惧される場合は水疱膜を処理したうえで、湿潤療法を行うのがベターと考えます。
(2)ガーゼドレッシングなどで創面から水分を吸収し、乾燥させる治療を行う場合(開放にして乾かしてしまうのも含む)は、
水疱膜を破綻させると乾燥ストレスにより創傷治癒の遅延、痛みが生じます。
つまり、ガーゼなどで乾燥治療を行う場合は水疱を温存(残す)した方が良いです。とは言え、キズは乾燥させたら痛いし、治りは遅くなりますのでガーゼ治療は基本的にはしません。
実際のやけど治療には、やけどの質、分布の仕方、コンプライアンス(キズを自己管理できるか)などの要素を加味して選択します。
①水疱膜を処理
②水疱膜を処理しない
の選択肢のほかに
③数日水疱膜を保存してみてから処理を検討する
などもあり得るでしょう。
現実問題、自己ケアできない・通院できない・看護介護するヒトが限られるという状況もあり、湿潤療法が出来ないケースもあるのですよね。その場合は水疱膜はとっておくこともあります。
要は傷そのものを乾燥させないこと。
尚、湿潤療法と閉鎖療法とはイコールではありません。誤解の無きよう。特に感染が危惧されるケースでは閉鎖はしません。