こんにちは、金沢です。
宇宙飛行士、若田光一氏のリアル人生を垣間見る本。
『一瞬で判断する力』若田光一著
リアルタイムに迫るトラブルにその時点で最適解を導き出すリーダー。うまくいかないと宇宙では大トラブルに発展する!その危機管理の考え方をまとめた本。
一瞬で判断するために必要なこととは?「想像」「学ぶ」「決める」「進む」「立ち向かう」「つながる」「率いる」をキーワードに展開します。
医療現場にそのまま応用できること多し!
なぜかって?
医療現場は常に限られた情報の中でその場での判断が求められるからです。
(補足)医療を介入する(検査、治療をする)判断だけでなく、介入しない(様子を見る)も重い判断です。たとえば「今」その検査が必要か?の判断。情報がそもそも不足した状態(絶対大丈夫というお墨付きデータもない状態)で「もう少し様子を見れる」と判断するのです。なぜ「様子を見る」判断をするのか?検査はコストだけでなく、患者さんの時間を犠牲にする上、身体上のリスク(薬剤、放射線、穿刺など)もあるのです。
ある程度経験を積んだ、チームを率いる立場にいる医療者に読んでほしい本。
医療者として共感したことがたくさんあるけど一部を紹介
違和感を大事にする
シナリオ通りに経過しても、「なんかおかしいなあ、病的だなあ」と感じることがあります。その感性、意外に大事。
人間を診断するのに画像や検査の数値ではまだまだ限界があります。とくに外科医は経験に基づいた感性が求められます。手術術式は決まっていても、患者さんの性別、年齢、体格、既往、合併症もろもろ…いわゆる平均の人など存在せず、手術のたびに何かが違う新しい人体と対峙しています。
そんな中で人体が発する微妙なサイン(検査データに表れないような)を違和感や感性で受け止めて、その場で判断して対処しているのです。
一方、若田氏はこんなことも述べます。
「緊急時は記憶ではなく、記録(手順)を頼れ」
「個人の過去の成功体験など間違っていることがある。先入観にとらわれるな」
我々医療者が今まさに努めるべき課題でしょう。
経験を共有し、マニュアルを日々更新して強化するのです。個人の経験と直感に依存しない確かな医療を築いていくべきです。
最悪の事態を想定する
「十分な危機管理によって「今」に集中する心の余裕ができる」
納得です。
わたしがまぶたの手術をするときは、術中に病院が停電になることも想定しています。懐中電灯で誰かが照らしてくれればなんとか終わらせられる自信があります(精度は落ちるけど)。そう思えれば、照明などが十分にある環境では、確かに心に余裕ができますね。
最近は自分が突然死することも想定して行動しています。考えすぎ? 🙄
愚かな質問はない
質問によって理解を深めるだけでなく、相手の信頼を得ることができるのです。内気な私を励ましてくれるコトバ。
あとは実践あるのみ。
優しい口調をもって平易な文章で語られますが、すべてのポイントを同時にこなしている点で若田氏は常人ではないことに気づきました。一つずつ取り入れることができたら御の字ではないかな。
がんばろうっと。
あとがき
私は救急外来トレーニング(JATEC)のシミュレーション(重症患者が運ばれてきて、リアルタイムに容体が悪化する)で非常に緊迫した状態を経験し、帰宅後に鼻血を出しました。1秒を争って判断して行動するのは寿命を縮めます(>_<)。救急の先生は偉い!